「君の名は。」の視聴順番、日本神話などネタバレ・考察
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最終更新日:2022/11/28
真夜中のガジェッター 製品レビュー
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長いこと映画の最高傑作は「バックトゥザ・フューチャー1・2」と答えていた。
それを変えたのは「君の名は。」だった。
この記事は映画「君の名は。」がアマゾン見放題サービス「Prime Video」対象期間中なので、是非とも楽しんでほしくて、次のような構成で書いている。
(記事の前半)
三葉・瀧と同じくらい重要人物である三葉の両親「二葉・俊樹」のストーリーが映画では語られていないため、少なくともアナザーサイド作品は見てほしいと言う内容を書いた。
(記事の後半)
宮水神社と日本神話の舞台背景などネタバレを含む考察。
そのため、記事後半へ入る前に「隠り世(カクリヨ)」への境界線を張っている。
関連作品を通る前に「カクリヨ」へ足を踏み入れぬよう注意していただきたい。
(記事の末尾)
最も感動したシーンを書いた。
(前半)「君の名は。」の視聴順番
はじめに「君の名は。」の”あらすじ”を掲載(原文ママ)。
千年ぶりとなる彗星の来訪を一か月後に控えた日本。
引用:Amazon Prime Video
田舎町に暮らす女子高校生・三葉は憂鬱な毎日を過ごしていた。
ある日、自分が男の子になる夢を見る。見覚えのない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の街並み。都会での生活を満喫する三葉。
一方、東京で暮らす男子高校生・瀧も奇妙な夢を見た。
行ったこともない山奥の町で、自分が女子高校生になっているのだ。
繰り返される不思議な夢、明らかに抜け落ちている記憶と時間。二人はお互いが入れ替わっていることに気付く。何度も入れ替わる事に戸惑いながらも、現実を少しずつ受け止める二人。残されたお互いのメモを通して、状況を乗り切っていく。しかし、気持ちが打ち解けてきた矢先、突然入れ替わりが途切れてしまう。
自分たちが特別に繋がっていたことに気付いた瀧は、三葉に会いに行こうと決心。辿り着いた先には、意外な真実が待ち受けていた…。
アマゾンプライムに加入していればレンタルや購入手続きをせずに視聴可能、Prime VideoアプリをAndroid/iOSにインストールすれば外出先でも楽しめる。
君の名は。を追っていく順番。
この物語を知るのに必要と感じたのは、次の3作品だった。
- 映画「君の名は。」(プライムビデオ視聴ページへ)
- 漫画「君の名は。 Another Side:Earthbound」(Amazon販売ページへ)
- 小説「君の名は。 Another Side:Earthbound」(アマゾンの小説版ページへ)
上記タイトルに含まれていないが最初に誕生したのは小説版、その後で上記「1」の映画が公開された。
監督自ら語るように「映画に適した作品」で「映画制作中にRADWIMPSや製作陣の熱量で設定を更新した箇所もある」ため、映画が”作品の最終確定版”であり、かつ観やすい”三人称で展開”されるから映画を最初に観るのが良いと思う。
「2」に挙げた漫画版アナザーサイドを読むとテッシーと瀧の友情物語、四葉のムスビ体験談、そして映画で大幅カットされてしまった重要人物である宮水二葉と俊樹の物語を知ることができる。
「3」の小説版アナザーサイドは単純に漫画版の内容を文字に起こした作品ではなく、一人称で展開・・・つまり「あのシーン、あの言動に至った感情」を知ることができる。
たとえばクライマックスでは俊樹が全て理解したうえで娘を待っていたことなど、映画で大幅カットされた重要なシーンが記録されている。
ちなみに小説アナザーサイドの著者は新海誠さんではなく加納 新太さんとなっているが、同氏は映画「君の名は」のシナリオ・脚本を協力した中の人(ご本人のブログでも説明している)で「今回の小説では、捨てるには惜しいものを復活させています。」と内容について言及、決して妄想で書いているわけではない。
その例として三葉が髪を切って登場する最初のシーンにはアナザーサイドで詳しく描かれる滝たちが作った「オープンカフェ」が完成している。また、テッシーがダイナマイトを使いたがった理由も説明されている。
ここまで来れば「君の名は。」という作品の世界を見渡せると思う。
そして、再び小説「君の名は。」を読むことで監督の本音に触れられる。
さらに糸を辿っていくなら・・・
より理解を深めたい時は、下記の順番で2作品に触れることをお勧めしたい。
- 小説「君の名は。」(Amazon販売ページへ)
- 漫画版「君の名は。」(第1巻のAmazon販売ページへ)
小説版では劇中で最も感動したと言う声の高い「三葉の手に書かれた文字の意味」がわかりやすく丁寧に描かれているので、映画版を見て「名前じゃないの?」と思ってしまった時は答えを知ることができる。
そのほかにも小説版は創造主である監督が作中で描きたかった物語を瀧と三葉の一人称で展開しているため、複雑な話を大ヒットさせるために省いたと思われる機微な内容・設定が書き込まれていた。
そして、最後に漫画版を手に取るとアナザーサイドなど4作品を知っているからこその小さな発見がある。これまでの糸を手繰り寄せながら読み進めると脳内でRADWINPSが演奏してくれて驚く瞬間があるはずだ。
他にも映像特典9時間超えというファン必見のBD&DVDも発売(Amazonへ)されている。
さて。
ここから先は隠世(カクリヨ)。
ネタバレが含まれているため全てを知った上で読んでもらえたら幸いだ。
(後半)日本神話としての「君の名は。」
(ここからは関連作品の情報を全て知っているという前提で話を進めていく)
宮水神社の天羽槌雄神(あめのはづちのおのかみ)は、日本神話の神で武を持たない「機織りの祖神」として伝えられている。
それにも関わらず、悪神と明記される異例の存在「星神香香背男(ほしのかがせお)」という星の神を誅したと残されている。
なぜ誅することができたのか。
その理由として「織物の中に星を織り込んで封印した」という説がある。これは「太陽が沈んでも空に星が残っていることを対処した」ともいわれている。
(詳細はWikipediaへ)
それはまるで、ティアマト彗星と地球が1200年周期で織りなすムスビと、糸守湖に根をおろした豪族・領主で組紐を扱う宮水家の関係を彷彿とさせる。
アナザーサイドで言及された天羽槌雄神の末裔なのかはわからないが、人や時間さえも飛び越える神(ムスビ)の力を女系の宮水家は受け継いでいたようだ。
(ここは推測だが)ティアマト彗星の再会場所は水辺となるため、1200年の間に自然と人間が住み始めてしまう。その悲劇が再び起こらぬよう宮水家が領主として町をおこし、自ら神社を建て糸を紡いできたのではないだろうか。
それを示す文献は1803年に起きた「繭五郎の大火」で宮水神社の全焼と宮水家の数名を巻き込んで燃えてしまう。
これは宮水の女たちの逆鱗に触れたはずだ。
瀧の行為に対して書かれた三葉のメッセージからも察しはつく。なんせ「繭五郎」と名指しで語り継がれているのだから・・・。
まぁ、実際、とんでもないことを繭五郎はしてしまった。
いつしか「祭りの日に星が落ちる」「御神体は星の逢う場所(落下地点)から離れた場所にある」といったことは誰もわからない状態で祭事が行われていた。
しかし、そんな繭五郎の失態を覆すほどの力を持っていたのが宮水二葉。
その母:一葉は宮水家の伝統を守るしかなかったが、時代の移りとともに行政へと権力が流れていく、その重要性を二葉はわかっていた。
彼女の人知を超えた力で民俗学者である「俊樹」を手繰り寄せ、「最期の言葉」を彼に刻み、一葉や娘をはじめ町民に疎まれても町長として強制避難を実行できるだけの権力を、彼に握らせた。
その娘の三葉もまた時を越えてでも逢いにくる「瀧」を組紐で手繰り寄せた。
俊樹と同じように瀧も役目を果たす。
「俊樹」「瀧」という糸を紡いで町を守った宮水家。
それでもティアマト彗星と地球は1200年周期という気が遠くなるような糸で結ばれているため、2度も同じ場所で落ち逢い、再び”もう1回だけ”と逢いたくなるかもしれない。
しかし、今度は御神体の壁面ではなく電子データとして記録される。
そう言う意味では、多くの神社と同じように宮水家は役目を終えたのかもしれない。
天羽槌雄神が星という抗えない存在を「誅する方法」、それが織物の神らしく人や時間のムスビを操ることだったという解釈は素敵だと思う。
日本の神社や地蔵様には大昔に起きた津波の位置を記録したり、噴火や洪水を知らせる意味があるともされている。
境内へ入ると鈴が鳴るような凛とした空気の張りを覚える時があって、あれこそ宮水家のような過去から続く「記憶に残らないメッセージ」なのかもしれない。
私のような人間には何も残らない。
それを感知して、信じて、行動までできたのが俊樹であり、瀧、テッシー、サヤちんだった。
「そんなこと誰も信じない」の意味。
ここでは映画と小説で直接的に語られていないものの、高確率で正しい解釈であろうと思うことを書いていきたい。
はじめに瀧が宮水一葉に信じてもらえなかったシーン。
彼女はアナザーサイドからも最初の頃の入れ替わりから事態を把握していていたことがわかる。それなのに「そんなこと誰も信じない」と返答、それを瀧は「意外に普通のこというばあちゃんだなぁ」と言っていた。
しかし、宮水一葉は宮水家の1人であり、宮司でもある。
映画のクライマックスで俊樹の事務室で腰掛けているのを見て私は「俊樹に進言したのだな」と思った。
実際、その後に読んだアナザーサイドで「三葉を信じてやれ」といった内容を伝えるシーンがあった。そのことからムスビを重視する彼女が放った「そんなこと誰も信じない」には次のような考えがあったと思う。
- 町全体を避難させるため、誰に言うべきかわかっていた
- 本来は領主で宮水神社・宮司である自分が避難指示をするはずだった
- 時代の流れを読み取って二葉が新しい権力に繋いだ
- 今の「瀧」が進言しても彼は信じない
- 最善策を話したところで「夢が覚めれば、忘れてまう(忘れてしまう)」
すでに瀧と三葉は強く結ばれている。
瀧の役目は未来から綻びを正すためやってくること。
星に抗える三葉を未来から還すこと。
「そんなこと誰も信じない」としか言いようがない。
ラストシーンで”宮水家を最も信じなかった俊樹”の前に三葉が「二葉の組紐」を結って現れたとき、彼はアナザーサイドで描かれていたように愛しい人と逢えたのが救いだろう。
「なぜ宮水神社の研究をしたのか」
「結婚する気がすると言われたこと」
「全てを捨てて宮水家に婿入りしたこと」
『これがお別れではないから』
「町長になった理由」
彼が全てを受け入れたシーンは鳥肌が立つほど感動した。
「あの糸守はよかった」の意味。
高山ラーメン店主もまた素敵な糸だった。
仕事の都合で被災しなかった彼が御神体へと導いたのは、瀧が推測していたように見捨てられないほど酷い顔をしていたこともあるかもしれない。
しかし、それ以上に瀧の描いた糸守町がリアルだったからだと思う。
誰でも郷愁といった写真展などから糸守町をスケッチすることはできるが、映像媒体では表現できない熱量で「被災直前の糸守町」を瀧が描いたとしたら・・・。
3年前とはいえ、あの町の日常を思い起こさせたのではないか。
なぜ、ここまで鮮明に描けるのか、と。
だから「あの糸守はよかった」と口をついたのではないだろうか。
だから早朝から車に乗せて、瀧に弁当まで用意した。
あの愚直なセリフは組紐にすれば短い糸かもしれないが、とても鮮明に残っている。
神楽舞と組紐。
アナザーサイドでは、四葉が奉納前の御神酒(口噛み酒)を味見し、同じく味見した千年ほど離れた宮水の人と入れ替わるシーンがある。
そこで教わった倭文神の末裔であること、四葉となった人の舞は一葉でさえ忘れていた神楽舞だったという話。
これまでの5作品で説明はなかったが、このシーンを見て、私は
「あ、この舞は組紐を渡すためにあるのか」
ふと、そう思った。
1200年近く受け継がれてきた舞が、実は「三葉が組紐を確実に渡すための練習」だったかもしれないと考えたら、何だか微笑ましく思えた。
武を持たない天羽槌雄神らしくて、女系の宮水家に代々受け継がれてきたというのも含めて。
1200年前は岩の壁に描くしか伝達方法はなかったが、1200年後には映像で残せるし、ティアマト彗星が近づいた時点でメディアの報道合戦がはじまり避難指示も発令され、巫女の力は不要になる。
だからこそ「三葉の代が最重要」だったのではないか。
三葉は星が降る前日、なんとしても瀧に組紐を渡して最期のムスビを支度しなければならない。
そうしないと星に抗えない。
1200年も紡いできた宮水の糸が切れてしまう。
絶対に失敗できない神楽舞となる。
だからこそ、サイドストーリー等で描かれた三葉の優等生ぶりは徹底していた。父親が町長になったのも強制避難に必要というだけでなく「娘を町中で厳しく監視」するように仕向ける役目があったようにさえ思う。
三葉は幼少から気の遠くなりそうな髪の編み方を欠かさなかったり、神社の勤め、舞を覚え、(瀧になれば浪費するが自らは)倹約家、氏子に「お嬢さま」と言われる宮水神社を中心とした領主の姫でもある。
決してドジっ子キャラではない。
そんな三葉だから人混みに流されながらも瀧の手に収まるよう組紐を放ることができた。
きっと、どのような体勢になっても綺麗な鈴の音が響くような神楽舞で組紐を手渡しただろう。
もちろん全作品を見返しても、そんなことは説明されていない。
ただ、そんな気がした。
レストランや涙のシーンほか。
他にも「言の葉の庭」関連で先生やレストランの名前といった話、瀧や三葉が涙を流す理由に関する話もある。しかし、それらは解釈が別れることもないので省かせていただく。
なお、ユキちゃん先生の物語を知りたい時は下記の映画「言の葉の庭」を視聴(Amazonプライムへ)するとよいと思う。
「言の葉の庭」もまた小説版(Amazonへ)は一人称で進み、かつサイドストーリーが描かれている。
最も感動したシーン。
最も感動したシーン。
1回目の視聴では三葉が転倒してから手のひらに書かれた瀧の”返事”を受け取るシーンだった。
小説版の言葉を借りるなら「あれだけの想いを背負って東京に来て」「決定的に傷つき、町に戻り、髪を切った」。そして星が降って最期を迎えている。
神(ムスビ)に逆らって「名前」を書いても誰?となってしまう。
だからこそ夢が覚めても消えない”想い”(返事)を三葉に書いて神(ムスビ)との大勝負に出たのだろう。
瀧は、美しく、もがいた。
そして、2回目以降の感動シーン。
オープニングで二人が背中合わせで急速に成長する短いシーンがある。
そのとき、浴衣姿の三葉が少し俯きながら消えていく様子があって、17歳で運命の人へ逢いに行き、失望の中で最期を迎える絶望感に毎回やられている。
→映画「君の名は。」の予告シーンはプライムビデオから確認できる。