ゲーム機BIOSとROMの吸い出し、違法の境界線とは。
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最終更新日:2022/04/19
周辺機器 Fire TV Stick, ゲーム機, 製品レビュー
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Fire TV Stickを購入して様々なゲーム機を再現できる総合エミュレータ「RetroArch」をインストールしたが、所有しているゲームのROMを吸い出して遊ぼうとすると違法になるケースがある。
この記事では今一度、自分で購入したゲームタイトルをROM化しても良いのか、そもそもエミュレータは違法なのかという境界線を過去の裁判などから確認していきたい。
ゲームROM吸い出しの違法性。
任天堂がレトロゲームを楽しめる「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」を2016年に発売してから、コナミ「PCエンジンmini」やSEGA「ゲームギアミクロ」といった製品が登場した。
その後は私も契約している任天堂Switchのサブスクでレトロゲームが楽しめるコンテンツ「Nintendo Online」(任天堂へ)も登場、懐かしいゲームも楽しみやすい環境になっている。
その一方で、スマートフォンやタブレットに懐かしいゲームタイトルを入れて持ち運びたいというニーズもある。
そこで必ず登場する話題が「エミュレータ」と「ROMファイル」だ。
エミュレータは違法か。
よくエミュレータ自体の所有や起動は問題ないという話も見かけるが、次の著作権に関する期限を見てみよう。
- ゲーム端末のハードに関する著作権=20年間
- ゲーム端末のソフト(BIOS)に関する著作権=50年間
このBIOS(Basic Input Output System)を含むと違法になる可能性が高いと言われている。
それではエミュレータ全てが違法なのかというと、なんと日本では大手を振ってエミュレータ内蔵のハードが販売されている。
かの有名な「レトロフリーク」(Amazon検索結果へ)だ。
このレトロフリークは2022年4月になっても販売が継続されている。
このレトロフリークに内蔵されているゲーム端末のBIOSはコピーガードがない機種だから販売が差し止めになっていないようだ。
そのため、エミュレータが違法かどうかはレトロフリーク内蔵の下記ゲーム機がヒントとなるだろう。
- ファミリーコンピュータ
- スーパーファミコン
- Super Nintendo Entertainment System(NTSC/PAL)
- ゲームボーイ
- ゲームボーイカラー
- ゲームボーイアドバンス
- メガドライブ(NTSC/PAL)※
- GENESIS(北米版メガドライブ)
- PCエンジン
- TurboGrafx-16(海外版PCエンジン)
- PCエンジン スーパーグラフィックス
ざっくり捉えるならばプレイステーション以降の次世代ゲーム機は違法ということになりそうだ。
初代プレイステーションが発売されたのは1994年12月3日、それから50年後となる2044年までは著作権で保護されているため、BIOSやプラグインが不要を謳い文句に人気となっているプレステ以降のエミュレータ「PPSSPP」等を利用する際はソニーの著作権侵害を回避したうえでソニー以外が開発したBIOSを使わない限り違法ということになる。
以前はファミコンディスクシステムのBIOSはレトロフリークから吸い出すこともできたようだが・・・。
実はソニーの製品「Sony PlayStation Classic」も海外のエミュレータを利用して販売していることで当時は話題となった。
話を戻そう。
レトロフリークの会社サイバーガジェットは2020年4月、代表取締役の男性ら3名がゲームのセーブデータを不正に改造したとして不正競争防止法違反の疑いで書類送検(神奈川新聞社へ)されている。
しかし、ファミリーコンピュータやゲームボーイのエミュレータを内蔵した端末を販売したことについては何も罰されていない。
まとめると「ファミコンからPCエンジンまでのゲームハードはBIOSを販売してもコピーガードされていないから書類送検されない」ということになりそうだ。
ゲームROMは違法なのか。
ゲームタイトルに関して「私的利用ならOKという誤解が蔓延」している。
ACCS(一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会)によるとROMカートリッジからのデータ吸い出しについてはカートリッジ側にコピーガード(技術的保護手段)が施されている場合は私的利用でも著作権法違反(著作権法第30条1項2号)になると明言している。
また、コピーゲームの起動制限機能(技術的利用制限手段)が施されている場合、それを回避してゲームを起動した場合は著作権侵害(著作権法第113条1項3項)になるという。
ん?先ほどのレトロフリークは大丈夫なの?と思うかもしれない。
レトロフリークは「ROMカートリッジスロット」に手持ちの実機カセットを入れて遊ぶため合法となっているようだ。
そこで、ROM違法の境界線を巡る興味深い話を1つさせていただきたい。
100%合法を謳うエミュレーションサービス「Console Classix」
任天堂は2018年半ばから多くのゲームROM配布サイトに対して訴訟を起こしてきた。
その中に100%合法である唯一のエミュレーションサービスを謳う「Console Classix」があり、同サービスに対しても任天堂は訴訟を起こしている。
しかし、Console Classix側は次の点から問題はないと真っ向から反論した。
- 月額5.99ドルの会員制サービスで無制限のROM配布に該当しない。
- 創業者アーロン・エスリッジ氏が所有している膨大なゲームソフトからROMファイルを抽出している。
- ROMファイルは会員の誰かがアクセスすると独占権が与えられる仕組み。
要するに「レンタルサービス」と主張しているのだ。
そして、2022年4月14日の記事投稿時点でも「Console Classix」(公式サイトへ)はサービスを提供し続けている。
つまり、2018年頃に行った任天堂の主張が認められなかったとも言える。
この話からROMに纏わる違法の境界線を見ていこう。
違法になりにくいゲームソフトとは。
先ほどの「Console Classix」は任天堂の訴訟を受けてもサービスを継続できていることから同社が提供しているゲームソフトはROM吸い出しに関して裁判を起こすことができないとも言い換えることができる。
そこで同社が提供しているゲーム機を見ていきたい。
- Sega Genesis(メガドライブの米国・カナダ・メキシコ版 by Wikipedia)
- SMS(セガ・マスターシステム)
- Nintendo 64(ニンテンドー64)
- GBA(ゲームボーイ・アドバンス)
- GB Color(ゲームボーイ・カラー)
- Gameboy(ゲームボーイ)
- Sega Game Gear(セガ製ゲームギア)
- TurboGrafx-16(海外版のPCエンジン)
()内は勝手に翻訳したゲーム機名。
やはり先ほどのレトロフリークと同じようにプレイステーション以降のゲーム端末がないという結果に。
「Console Classix」のサービスをまとめると、創業者のゲームカセットからROMを吸い出しサーバーへアップロード、会員アカウントと結びつけて同時接続数「1」に制限、レンタルサービスとして提供ということになる。
まとめ。
著作権やコピーガードの話は細かく分かれていて「森」ではなく「木の葉」まで見ようとすると時間を失うだろう。
そのためサクッと判断する材料としてはセーブデータで書類送検されるほどストロングスタイルな「サイバーガジェット社」と「Console Classix」が踏み込んでいるゲーム機までとなりそうだ。
彼らは第三者にサービスとして提供しているのだから、手持ちのカセットを私的利用する程度であれば違法ダウンロード・違法アップロードをしない限り何処かへ連れて行かれることはないだろう。
ここで注意すべき点がある。
総合エミュレータ「RetroArch」はコアダウンロード機能を使うことでファミリーコンピュターやゲームボーイといったゲームハードのBIOSをダウンロードできるが、実機を持っていなくて、かつ著作権の期限が達していない場合は違法になるかもしれない。
ディスクシステムやGBAについては調べると簡単にハード機のBIOS吸い出し方法があったが、いずれも結構な労力が必要となっていた。
ここまでくるとグレーゾーンになってしまうため、GBA実機を所有していて「Androidスマートフォンに入っているエミュレータは数年前に実機から吸い出したBIOSで、今は吸い出し装置を捨ててしまった」と主張するクラッカーがいても時間をかけて違法性を検証することは難しそうだ。
これらのことからプレイステーション以前のゲーム機とゲームタイトルはコピープロテクトがないため吸い出し行為は違法にならない可能性が高く、実機を持っていて私的利用の範囲であれば罪に問われにくい。ということになりそうだ。
なお、人気のプレステエミュ「PPSSPP」を前回レビューしたFire TV Stickにインストールして遊ぶことも可能だが、エミュレータの項目で触れたようにプレステエミュの起動は違法なので注意していただきたい。
次回はFire TV Stick 4K Maxや任天堂スイッチに「サイバーガジェット社」が取り扱っているゲームコントローラーを接続、使えるのか試していきたい。
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続き→8BitDo Pro 2 購入レビュー、Switch / Macと接続する。
前回→Fire TV Stick 4K Max購入レビュー、禁断のエミュは入るか